北九州市での有害物質「PCB」処理に区切り…地元、施設解体や土壌安全性確保を注視

 高濃度の有害物質PCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む廃棄物の無害化処理を約20年間行ってきた「中間貯蔵・環境安全事業(JESCO)」北九州事業所が、3月31日で操業を終えた。未処理の廃棄物が各地で見つかったことで期限は2度延長され、当初計画から9年遅れた。北九州市でのPCB処理は区切りを迎えるが、地元は今後の施設解体や土壌の安全性が確保されるのか注視している。(牟田口洸介)

「高濃度PCBの漏えいリスクを我々の世代で抑え込めたのは大きな意味がある」。渡辺謙二所長は1日、そう強調した。

 環境省はPCB処理を「21世紀の最重要課題」に掲げ、国が100%出資する特殊会社のJESCOが全国5か所で進めてきた。同市若松区の北九州事業所は洞海湾沿いの埋め立て地に建設され、全国に先駆けて2004年末に稼働した。

 九州や関西の事業者から廃棄物が持ち込まれ、変圧器や蓄電器計約6万2000台、PCB汚染物など約1万トンを処理。当初は14年度末までに終える計画だったが、全国的な遅れで21年度末まで延長され、担当地域も九州や中四国17県から近畿や東海を含む31都府県に拡大された。さらに廃棄物が相次いで見つかり、23年度末まで再延長された。

 15年には、排ガスから市との協定の約11倍に上る濃度のベンゼンが確認され、約半年にわたって操業を停止した。2度の期限延長もあり、若松区自治総連合会の平野建会長(81)は「危険な廃棄物を放置できないと苦渋の判断で受け入れたが、いつ処理が終わるのか先が見えない不安も大きかった」と振り返る。

 建物には処理の過程で壁や配管、ダクトなどにPCBが付着しており、JESCOは洗浄装置で除去するなどした上で解体する。撤去後は土壌汚染を調査し、安全性を確認する方針だ。解体終了は29年度頃の見通しで、北九州市環境監視課は「完了まで監視を続ける」としている。

 全国では愛知県豊田市や大阪市の事業所も3月末で操業を終えた。北海道室蘭市と東京都江東区は25年度末までの予定で、環境省は西日本でPCB廃棄物が見つかった場合は室蘭で受け入れるよう要請している。

 一方、電気機器など低濃度PCB廃棄物は、北九州市戸畑区など全国31か所の認定業者が処理している。期限は26年度末だが、製造過程で汚染された変圧器などが膨大にあるとみられ、残存量は不明。同省の担当者は「低濃度PCBの処理も期限内に終わるよう周知したい」と話している。

◆PCB= 電気や熱を通しにくい油状の化学物質で、電気機器の絶縁油などに使われた。1968年、米ぬか油に混入したPCBなどを摂取した人に健康被害が生じた「カネミ油症事件」が発生し、72年に製造中止となった。2028年までの適正処分を求めるストックホルム条約が01年に採択され、国は同年に特別措置法を制定し、保有業者に処理を義務づけた。

2024年4月2日 讀賣新聞オンライン より

 

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