在日米軍が基地内で高濃度のポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む機器を使い続けていることが分かった。PCB特別措置法で国内の高濃度PCBは3月末までに処理を終えており、今はこうした機器の保有自体が違法だ。米軍の無法ぶりは目に余る。それを許している日本政府の怠慢と無責任ぶりにもあきれるしかない。政府は米軍に日本の法律に従わせるよう本気で取り組むべきだ。
そもそも日本政府は、米軍がどれだけ保有しているのかも把握していない。米国への搬出状況も把握していなかった。2002年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)での合意を受けて搬出が始まり、民主党政権は12年に搬出量を国会で答弁していた。所管する西村明宏環境相は、その経緯も知らなかった。
PCBは、1968年のカネミ油症事件で深刻な被害が出てその危険性が知られ、製造が禁止された。2001年にPCB特別措置法が施行された。保有者は量と管理の状況を都道府県へ届け出ることになり、高濃度PCBは今年3月、低濃度は27年が処理の期限だ。
国際的には、残留性有機汚染物質の製造や使用を禁止するストックホルム条約が04年に発効し、日本も加盟している。条約ではPCBについて25年までに使用全廃、28年までの処理を求めている。米国は、同条約の批准に至っていないが、国内法でPCBを規制し、処理を進めている。米軍関係者も危険にさらす高濃度の使用は、条約にも米国内法にももとるものだ。
1996年に恩納村の米軍恩納通信所跡地で、2002年には米軍から引き継いだ航空自衛隊恩納分屯基地でそれぞれ大量のPCB含有汚泥が見つかり大問題となった。米軍は、返還地の原状回復義務を免除した日米地位協定を盾に引き取りを拒んだ。結局、沖縄防衛局が管理せざるを得なくなり、14年にようやく福島県の処理場で処理を終えた。米軍の特権を認めた日米地位協定が足かせとなり、住民を不安に陥れ、跡地利用にも遅れが出た。その教訓を忘れてはならない。
高濃度PCBについて西村環境相は「外国軍隊は当該国の法令を尊重する義務というものを負っている。日米地位協定にも、これを踏まえた規定が置かれている」と説明した。しかし、本気度が見えない。玉城デニー知事は「米国政府の責任で適正に処理することを引き続き求めていく」と述べた。米軍の身勝手を放置している日本政府に、より強く求めるべきではないか。
PCB処理の所管は環境省であり、在日米軍の所管は防衛省だ。両方に責任がある。沖縄は米軍に起因する環境問題に苦しみ続けている。有機フッ素化合物(PFAS)の水汚染や、北部訓練場跡地の放置弾薬の問題も同様だ。日本政府のこれ以上の怠慢は許されない。