塗膜中に有害成分が含まれているかの測定のご依頼をいただきました。
塗膜とは、塗料を塗った後に乾燥させてできる薄い膜のことです。塗膜は、建物や橋梁、船舶などの鋼構造物の防食や美観を保つために重要な役割を果たしています。しかし、塗膜には、人体や環境に有害な成分が含まれている場合があります。そのような有害成分の代表的なものは、以下のようなものです。
・鉛化合物
鉛は、防錆や着色の顔料として昭和41年(1966年)から昭和47年(1972年)まで使用されていました。鉛は人体に貧血や肝臓病、神経障害などを引き起こすことが知られています。鉛を含む塗膜は、鉛中毒予防規則等の関係法令に従って処理する必要があります。
・クロム化合物
クロムは、防錆や着色の顔料として昭和41年(1966年)から昭和47年(1972年)まで使用されていました。クロムの中でも六価クロムは発ガン性が高く、国際がん研究機関(IARC)の発ガン性分類グループ1に分類されています。クロムを含む塗膜は、特定化学物質障害予防規則に従って処理する必要があります。
・ポリ塩化ビフェニル(PCB)
PCBは耐水性や化学的・熱的安定性が高いため、可塑剤として昭和41年(1966年)から昭和47年(1972年)まで塩化ゴム系塗料に使用されていました。また、非意図的な汚染により他の塗料にも混入していた可能性があります。PCBは内分泌攪乱作用や発ガン性があることが知られています。PCBを含む塗膜は、PCB特別措置法に基づいて処分期間内に処分する義務があります。
・タール(コールタール)
タールは石炭乾留により得られる黒い粘稠な液体で、原料にタールを用いたタールエポキシ樹脂塗料は海岸地域や海洋構造物などに広く使用されてきました。タールはベンゾ[a]ピレン(BaP)など多環芳香族炭化水素を含んでいます。タールは発ガン性グループ1に該当し、特定化学物質障害予防規則への対応が必要です。
これらの有害成分を含む塗膜は、塗装の塗り替えや除去の際に、作業者の健康や周辺環境に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、塗膜の調査や処理には、適切な方法や法令に従って行う必要があります。厚生労働省や国土交通省などは、塗膜の有害成分に関する調査実施要領やマニュアルを公表しており、参考になると思います。
○鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について
namari.pdf (johas.go.jp)
〇土木鋼構造物用塗膜剥離剤ガイドライン(案)改訂第2版
doken_shiryou_4354_00.pdf (pwri.go.jp)