先日、弊社で使用している機器のメンテナンスを行っていて、ある部分のフィルターを交換したところ、黒い小さな粒状のものがフィルターに大量にこびりついていました。
これは何だろうと思い、いろいろと測定をしてみました。
下の写真が実際のものです。
大きさは1㎝大のフィルターで筒状になっています。
これを顕微鏡で拡大した写真が以下です。
黒い細かい粒がたくさん付いていることが観察できました。多少光沢があるようにも見えます。
次に、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で測定を行いました。
FTIRを使うことにより、分子の構造や官能基の情報をスペクトルから得ることができ、物質定性・同定に関する有効な情報を得ることができます。
測定結果が下のグラフです。
グラフの下部の黒い線が試料で得られたグラフです。
上の赤いグラフは測定器のソフトに内蔵されているライブラリに保存されている物質のグラフです。たくさん保存されているパターンから、試料に似たパターンの物質が提示されます。 ライブラリから得られた物質はテフロン性の製品でした。これは、フィルターがテフロン性のものなので、ある意味当たってはいますが、黒い粒状のものが何なのかがわかるものではありませんでした。
次に、電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析(EDS)による測定を行いました。
電子線やX線を試料に照射すると、特性X線や蛍光X線のエネルギーが発生し、得られるスペクトルから試料表面の元素分析を行うことができます。
試料表面の成分がどのような元素が(定性)あるのかを測定することができます。
まずは黒粒の電子顕微鏡写真(4500倍)です。
何だかよくわからない形でした。
次にEDX測定を行い、得られたスペクトルが以下です。
上のグラフより、炭素(C)と酸素(O)とフッ素(F)のピークが出てきました。フッ素はフィルター由来(テフロン性)のものだと考えられます。
黒粒が付いていないフィルターのところの測定も行いました。
電子顕微鏡(500倍)写真が以下です。
月の表面みたいに結構デコボコですね。このデコボコにいろんな異物やら不純物が入り込んでろ過しているのですね。
さて、フィルター部のEDX測定のスペクトルが以下です。
フッ素(F)のピークだけが大きくなりました。
以上の結果から、黒い粒状の物質は炭素(カーボンブラック)だと推測されました。
異物測定は上記のような流れで測定を行っていきます。
弊社はこれまでに様々な異物の測定を行って参りました。
この異物が何であるかを機器を駆使して調べていきます。
異物でお困りの際はお問合せくださいませ。