福島県内にある高濃度ポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を室蘭市内に搬入し、来年1月ごろから国関連の専用施設で処理する計画を環境省が明らかにした。
廃棄物は、東京電力福島第1原発の事故後に国が指定した「汚染廃棄物対策地域」で生じた。
この地域の廃棄物は放射性物質汚染の恐れがあり、国が域内で収集・処理するのが原則である。だが現地には対応できる施設がなく例外的に室蘭に搬出する。
汚染が一定基準以下の廃棄物に限定するため、室蘭市は安全確保を条件に受け入れる姿勢だ。
今回の計画公表は唐突感が否めない。市民が健康への影響に不安を抱くのも無理はない。
環境省は科学的根拠を示し説明を尽くすべきだ。市も不安解消へ手だてを講じなければならない。
対象となるPCB廃棄物は同県双葉町など11市町村にあるコンデンサー(蓄電器)や蛍光灯の安定器などだ。原発敷地内のものは含まないというが、心配なのは放射性物質による汚染の程度である。
環境省によると、室蘭に送る廃棄物は表面の放射性物質の汚染密度が1平方センチ当たり4ベクレル以下に限る。医療機関などの放射線管理区域の物品に関し、国が定めた数値に準じるという。
今回の廃棄物は最大で同1ベクレル程度で「日常的に触れても安全性が確保される」との説明だ。
PCBは毒性が極めて強い。健康被害を招いたカネミ油症事件を契機に1972年に製造が中止されたが、今も環境汚染が続く。
2001年施行のPCB特措法に基づき、国が全額出資する特殊会社「中間貯蔵・環境安全事業」(JESCO)が全国5施設で広域的に無害化処理してきた。
室蘭の施設は道内や東北、関東など20都道県の廃棄物に対応する。福島も担当区域だったが、原発事故以降受け入れていなかった。
国の基本計画により、室蘭での高濃度PCB廃棄物の処分期間は23年春までと定められている。
その時期が迫る中、福島の廃棄物が問題となるのは自明だったろう。にもかかわらず環境省は今まで計画を公表しなかった。
放射性物質の除染や処理の手順を巡る安全性確保について、環境省が果たすべき説明責任は重い。
室蘭市は住民の疑問に答えるとともに、安心や安全の担保を最優先しなければならない。
過去にPCB処理施設を誘致した経緯がある道にも、不安解消の責務があるのは言うまでもない。