1968年に発覚したカネミ油症事件の原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)について考える全国集会が6日、初めてオンライン開催された。かつてPCBを製造したカネカ(旧鐘淵化学工業)について、元消費者庁事故調査室長で消費者問題に詳しい土庫(とくら)澄子氏は「(油症事件後に施行された)PL(製造物責任)法では法的責任は問えないが、被害者救済に取り組む社会的責任がある」と指摘。被害者と国、PCB混入の食用油を造ったカネミ倉庫(北九州市)に、カネカを加えた「4者協議」の設置を提言した。
95年施行のPL法では、68年発覚の油症事件にさかのぼって裁判でカネカのPCB製造責任を問うことはできないとされる。しかし土庫氏は「PL法は、法的責任を判断する裁判規範だけでなく、(消費者事故に関する)紛争を話し合いで解決するための社会規範でもある」と説明。こうした被害防止や救済に向けた社会的責任は、事件の発生時期に関係なく製造企業にあり、人体に有害なPCBを食品企業のカネミ倉庫に販売したカネカにも当てはまるという。
また過去に被害者側が、最高裁でカネカには責任がないと認めた「和解」について、「和解の内容は当時の当事者ではなかった(油症患者の子や孫ら)次世代には及ばない」とし、次世代被害の問題が大きくなるにつれ、カネカの社会的責任も大きくなると指摘した。
集会ではこの他、カネミ油症被害者支援センター(YSC)が3日に公表した次世代被害者の健康実態調査の結果も報告された。諫早市の油症2世で未認定の下田恵さん(31)は、集会後の取材に「調査の結果、次世代にも親と同じ症状が起きていると分かった。今までと違う視点から(次世代の油症認定の壁になっている)診断基準を見直すことができるのでは」と話した。
集会は2017年から、全国の被害者団体や支援団体が、PCBを製造したカネカ高砂工業所がある兵庫県高砂市で毎年開催。4回目の今年は新型コロナウイルス対策のため、長崎県(五島、長崎)、東京、兵庫、福岡の全国5会場と個人をテレビ会議システムでつなぎ、計約70人が参加した。集会を記録した動画は後日、YSCのホームページ上で公開する。