国内最大級の食品公害カネミ油症事件の被害が多く出た長崎県五島市は、1968年の発生からの半世紀を振り返る「カネミ油症事件50年記念誌」を発行した。同じような被害が二度と繰り返されないようにするため、多くの人に関心と理解を深めてもらおうと、市内の学校や図書館、医療機関に配布した。
カネミ油症は北九州市のカネミ倉庫が食用油の製造で、脱臭のために使ったポリ塩化ビフェニール(PCB)の混入によって発生。頭痛や吹き出物、しびれ、倦怠(けんたい)感など多様な症状が現れるため、診察した医者たちは「病気のデパート」と表現した。
全国の認定患者の4割近くが五島市に集中し、発生から50年が過ぎた今も、子や孫など次の世代の被害や、未認定患者の救済など課題が残される。
記念誌は被害者や市でつくる「カネミ油症事件50年記念誌編さん会議」が編集。事件の経過や2018年に行われた50周年記念行事の模様、被害者による座談会や寄稿、写真などを掲載。認定患者や被害を訴える人たちの声を丹念に拾っている。
A4判120ページ、800部発行。
(野田範子)