国内最大の食品公害「カネミ油症」の一連の訴訟が終結した1989年以降の認定患者や遺族54人が、原因企業のカネミ倉庫(北九州市)などに総額2億7500万円の賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は2日付で患者側の上告を退ける決定を出した。不法行為から20年が過ぎると損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に患者側の請求を棄却した1、2審判決が確定した。
1審・福岡地裁小倉支部判決(2013年3月)は、カネミ倉庫が米ぬか油を製造する過程で原因物質のPCB製品「カネクロール」の混入を知り得たのに、漫然と製品を製造販売したとして不法行為責任を認めた。一方で除斥期間の起算点となる「不法行為が行われた時」を、最後に油を摂取した69年と認定。賠償請求権は89年に消滅したと判断した。
患者側は「油症の症状は潜伏期間の経過後に表れる」として、起算点は患者認定時だと主張したが、2審・福岡高裁判決(14年2月)も「じん肺やB型肝炎と異なり、油症が進行性の疾病とは認められない」などと1審同様に請求を退けた。
小法廷は除斥期間についての判断は示さずに、「上告理由に当たらない」とした。
カネミ油症は68年に西日本一帯で起きた食品公害。約1万4000人に皮膚の色素沈着や全身の倦怠(けんたい)感などの健康被害が出た。カネミ倉庫や国を相手取った訴訟は89年までに終結したが、04年に診断基準が変わり、新たに認定された患者らが08〜10年に救済を求めて提訴していた。【山本将克】